2025年のデータキャプチャーのトレンド7選
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AIがテクノロジーの景観を変える中、2025年にはデータキャプチャがどのように進化するのでしょうか?文脈データキャプチャから多様なバーコード形式、ハイブリッドデバイス戦略まで、注目すべき7つのスマートデータキャプチャトレンドに加えて、アナリストや業界リーダーからの専門家の洞察をご紹介します。
1. まずはAIの話から始めましょう
2025年のテクノロジートレンドについて語るブログで、AIに触れずに書くのは不可能です。しかし、大規模言語モデル(LLM)や生成AI(GenAI)がスマートデータキャプチャの分野で一定の役割を果たす一方で、2025年には、それ以外のAI技術、特にコンピュータービジョンによってもたらされる価値が主流になると予想されます。
GenAIにおける目覚ましい革新を支えるコンピューティングパワーと機械学習の進化は、コンピュータビジョンにも同様のイノベーションをもたらしています。さらに、 Gartnerの「2024年版 AIハイプ・サイクル」によれば、GenAIが生産性のピークに達するにはあと2〜5年かかるとされる一方で、コンピュータービジョンはすでにその段階に到達しています。
シェルフインテリジェンス(棚情報の可視化)、高度なバーコードスキャン、偽造IDの検出など、AIによるコンピュータービジョンはすでに多くのビジネス課題を解決しています。2025年には、この分野に関する話題がさらに増えることでしょう。
2. データキャプチャはマルチモーダル化するだけでなく、コンテキストを理解するようになります
2023年、マルチモーダルデータキャプチャについて、人々は本格的に語り始めました。そしてその流れは、2024年に入って一気に加速しています。
AIによってさらに進化を遂げ、2025年にはこの技術は次のレベルへと突入するでしょう。私たちは、もはや「マルチモーダル」だけでなく、「コンテキストを捉えるデータキャプチャ」についても語るようになります。
倉庫で物流作業員が、電子機器のパッケージに貼られたバーコードをスキャンしている様子を思い浮かべてみてください。そのバーコードは、単独で存在しているでしょうか?もちろん、そんなことはありません。実際には、テキスト情報や他のバーコードとともにラベルに印刷されており、それら全体が意味を持つのです。
さらに言えば、印刷されたラベルは、三次元のパッケージに貼り付けられており、その周囲には何百もの他のラベルやパッケージが存在する、物理的な環境の中に置かれています。
つまり、それは「コンテキスト(文脈)」を持っているのです。そして物流作業員は、ただ画面を操作しているのではありません。デバイスを使って、実世界のモノを読み取り、捉えているのです。
コンテキストを捉えるデータキャプチャは、ラベル上のテキストやバーコードといったマルチモーダルな情報を分析するだけでなく、周囲の状況やユーザーの意図まで理解し、より正確で、完全で、実用的な情報を提供します。
Google Cloudのグローバル生成AI戦略担当バイスプレジデント、オリバー・パーカー氏はこう述べています:
「マルチモーダルAIは、より多くのコンテキストをもたらします。より直感的なインタラクションを可能にし、AIの出力精度を飛躍的に向上させます。」
実際、最新のScandit SDK 7.0に搭載されたスキャンエンジンは、AIによる高度なAIアルゴリズムを使って、カメラ映像からバーコードの検出・読み取りだけでなく、複数のシグナルを解析します。
これらの情報を組み合わせることで、コンテキストに基づいたバーコードスキャンが可能になり、スキャンの狙いが少しずれていたり、複数のバーコードが視界に入っている場合でも、正確に「意図したバーコード」を読み取ることができるのです。データキャプチャは、マルチモーダルだけでなくコンテキストに基づいたものになります。
SDK 7.0には、Smart Label Capture も搭載されています。これは、ラベルのスキャンを完全に自動化するソリューションで、マルチモーダルデータキャプチャを活用し、複数のバーコードや印字されたシリアル番号、重量、賞味期限などをワンプッシュで同時に読み取ることができます。
このSmart Label Captureは、米国のある小売企業において130万ドル(約1.9億円)以上のコスト削減を実現しました。データ入力ミスによる過少請求を防止できたことが、その大きな要因です。
Scandit SDK 7.0を使用して、よりスマートにスキャンしましょう。
3. 従来のバーコードの枠を超えた、新たな進化形
バーコードを想像してみてください。
どんなものを思い浮かべましたか?
おそらく、日常的に商品パッケージで目にする、黒と白の縦線の集まりではないでしょうか。
しかし2025年には、「バーコードとは何か」というあなたのイメージが広がり始めるでしょう。
GS1が推進する「Sunrise 2027」イニシアチブの進展に伴い、これまで主流だったUPCやEAN コードに加え、DataMatrixコードやQRコード が商品パッケージに使用されるようになり、場合によっては置き換わることも出てくるからです。
さらに、電子棚札(ESL)の利用もますます増えていくでしょう。これらはまだUPCやEANコードを使用していますが、そのサイズは非常に小さく、印刷された数字は表示されません。
新しいバーコードのスタイルには大きなメリットがあります。Data MatrixコードやQRコードは、従来の製品識別や追跡の目的を果たしつつ、遥かに多くの情報を保存できるのです。さらに、電子棚札を使うことで、小売業者はリアルタイムで価格の動的な更新が可能になります。
従来のバーコードは基本的な作業には十分ですが、QRコードはより豊かなインタラクションを提供します。たとえば、顧客に直接プロモーション割引を提供したり、製品レビューを表示したりすることが可能です。
— Jess Grisolia, Scandit, Retail Insight Network
しかし、より多様な種類のバーコードが登場することで、新たな課題も生じるでしょう。すべてのバーコードが同じではなく、すべてのバーコードスキャンソフトウェアが同じでもありません。
あなたのバーコードスキャンソフトウェアは、十分な明るさの中でフルサイズのEANコードをデコードできるかもしれません。しかし、電子棚札(ESL)上の小さなバーコードや、封筒に貼られた蛍光の郵便バーコード、あるいは乗客のスマートフォン画面に表示された列車チケットのデータ密度が高いAztecコードを確実にスキャンできるでしょうか?
2025年のバーコードスキャンソフトウェアは、1台のデバイスで複数の異なるバーコードを正確かつ柔軟にデコードできる必要があります。これは、AI駆動のコンピュータビジョン技術の進歩が大きな役割を果たす分野の一つです。
例えば、ポルトガルの最初で最も古い郵便サービス提供会社であるCTTは、蛍光バーコード(これまで専門の仕分け機でしかスキャンできなかった)をスキャンする機能を、最近、最終配送のモビリティアプリに統合しました。
4. データキャプチャは透明性と信頼の基盤となります
2025年には、消費者が透明性をさらに重視すると予測されています。特に若い世代においては、この傾向が顕著です。
サプライチェーン全体の透明性、企業の社会的責任、価格設定、製品情報、持続可能性など、真の透明性がブランドの忠誠心を築く要素となるでしょう。そして、この透明性は、消費者が購入する物理的な製品とデジタル情報をつなげることにかかっています。そのために必要不可欠なのが、データキャプチャです。
例えば、無料のYukaモバイルアプリを使えば、消費者は製品のバーコードをスキャンすることで、食品の栄養価や化粧品成分の健康度に関する即座の評価を得ることができます。
直感的で摩擦の少ないデータキャプチャは、Yukaの提供価値全体を支える重要な要素であり、決して些細な機能ではありません。スマートデータキャプチャの機能は、製品を迅速かつ正確に特定し、データベース情報と一致させるために欠かせません。これが、Yukaがコンテキストベースのバーコードスキャンを早期に採用した理由の一つです。
これは、データキャプチャが2025年に透明性を支える方法の一例に過ぎません。
Yukaアプリでの評価は、消費者の購買決定において重要な要素です。私たちは、食品製品の塩分、砂糖、添加物を削減する業界の取り組みにおいて重要な役割を果たしてきました。私たちは、より大きな枠組みの一部です。
François Martin、YukaのCTO兼共同創業者
5. 柔軟性こそが鍵となる
OECDによると、2025年の世界経済成長は依然として堅調であると予測されていますが、同時に重大なリスクや不確実性も存在しています。データキャプチャの分野では、これにより企業は大規模な自動化プロジェクトやハードウェア投資に慎重になり、柔軟なデータキャプチャソリューションに向かうことになるでしょう。
既存のハードウェア投資から新しい価値や効率を生み出すことにより一層焦点が当たると予想されます。新しいソフトウェア中心のアプローチにより、企業はハードウェアのアップグレードなしで高度なデータキャプチャ機能を導入できるようになります。
店舗スタッフや顧客をサポートするセミ・オートメーションが、フルオートメーションに対して優先されることになります。 Apple Vision Pro(下の画像参照)やスマートカート、スマートシェルフなどのウェアラブルデバイスは、大規模なハードウェアプロジェクトの侵襲性を避けつつ、自動化の要素を提供します。
6. データキャプチャはスマートフォンや携帯端末から解放されつつあります
2025年、新しいハイブリッド時代が幕を開けます。この時代では、固定カメラ、ドローン、ウェアラブルデバイス、ロボットがスマートフォンやハンドヘルドコンピュータと調和して動作します。
例えば、スマートカメラが小売店の棚を24時間監視し、店舗スタッフのハンドヘルドデバイスが優先的な補充作業を知らせるシナリオを想像してみてください。データ過多を解消するために、スマートな「コ・パイロット」システムが登場し、企業はフロントラインの従業員がアラートに埋もれることなく、高影響の業務に集中できるよう支援します。
企業は、このハイブリッドアプローチを活用して、まずは小規模で始め、ROIを証明した上で、より大規模な変革へとスケールアップしていくでしょう。
ここでの成功は、単にデータを収集することにとどまらず、これらの多様な技術をシームレスに連携させることにかかっています。
7. データキャプチャはサイバーセキュリティの競争における重要な武器となるでしょう
2025年には、技術の軍拡競争が確実に進展し、企業と悪意のある行為者との間の緊張が高まっているのが見て取れるでしょう。
データキャプチャの世界では、これに最も明白な例が自動化された身元確認の導入の増加です。手動による身元確認はますます追いつかなくなり、偽造された身分証明書が簡単に手に入る中で、より厳格なデータ保護とコンプライアンス要件が求められるようになります。
今日の相互接続された世界では、強固な認証と身元証明の重要性がこれまでになく高まっています。データ漏洩の急増、巧妙なフィッシング攻撃、そしてディープフェイクの登場が、信頼性のある身元確認メカニズムの必要性を一層強めています。
スティーブン・ディケンズとキース・カークパトリック、Futurum
結論:データキャプチャは戦略的資産となりつつある
長い間、データキャプチャはIT運用の中で見過ごされていた機能でした。しかし、AIによってスマート化され、活性化されたデータキャプチャは、2025年には価値創造とレジリエンスを前線に組み込み、戦略的資産へと変貌を遂げる準備が整っています。
デジタルと物理的な領域をつなぐことは、あらゆる組織のデジタルトランスフォーメーションの中心的な要素です。ソフトウェアベースのスキャンおよび高度なデータキャプチャソリューションは、組織にとって価値のある手段となり、スマートフォンやその他のカメラ搭載スマートモバイルデバイスを強力なデータキャプチャソリューションに変換することを可能にします。このソフトウェアは大きく進化しており、テキスト、オブジェクト、画像認識に加えて、継続的なスキャンや複数のスキャンといった機能をサポートしています。
VDCリサーチ、2024年